くるま素材
マガジン vol.2

2022/06/17

EV/PHV/FCV/HVとは?メリット・デメリットと普及のための重要点を解説

EV
PFV
FCV
HV
電気自動車
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地球環境問題への対応から注目されている電気自動車。「EV」、「PHV」、「FCV」、「HV」に区別され、それぞれの仕組みや特長、メリットが異なります。本記事では、それの違いやメリット、デメリットのほか、電気自動車のさらなる普及のカギを握る素材の重要性について説明します。

EV・PHV・FCV・HVの特長・メリット・課題とは

電気自動車を大きく分けると「EV」、「PHV」、「FCV」、「HV」の4種類があります。それぞれどのような特長があるのか、メリットとデメリットをまとめました。

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EV・PHV・FCV・HVの分類

「EV」、「PHV」、「FCV」、「HV」の違いを正しく理解するうえで、押さえておきたいのが「EV」の定義です。EVと聞くと、「エンジンを使用せず電気とモーターだけで駆動する自動車」と認識されがちです。しかし、厳密にいえばEVとは「車載バッテリーをエネルギーとして駆動する電動車両」の総称であり、このなかにはPHVやFCV、HVも含まれます。 エンジンを使用せず、バッテリーに貯めた電気とモーターだけで駆動する電気自動車は厳密に区分すると「BEV(Battery Electric Vehicle)」と言います。これに対し、ガソリンや軽油、水素など、バッテリーに貯めた電気以外も使って走る自動車は「PHV」や「FCV」、「HV」として区別されます。


【EV(電気自動車)】

  • バッテリーに貯めた電気とモーターだけで走る自動車:BEV

  • バッテリーに貯めた電気以外も使って走る自動車:PHV・FCV・HV

上記にまとめた通り、本来EVとは幅広い分類を指す言葉です。しかし、一般的に電気自動車といえば「BEV」ではなく「EV」のほうが定着していることから、本記事内では「BEV=EV(電気自動車)」として紹介します。

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EV・PHV・FCV・HV、それぞれの違いと特長を解説

EV・PHV・FCV・HVの違いについて、メリットやデメリットも含めて詳しく解説しましょう。

バッテリーの電力だけでモーターを駆動するEV(電気自動車)

専用の充電スポットや充電設備から車載バッテリーへ充電し、電力のみでモーターを駆動する電動車両がEVです。エンジンやガソリンタンクは搭載されてなく、モーターと車輪、大容量のバッテリーがあれば駆動するというシンプルな構成が特長です。

  • EVのメリット

ガソリンや軽油を使用しないため、走行中はCO₂を一切排出せず(※1)、環境に優しいメリットがあります。また、エンジンの機関内でガソリンを燃焼しないため、音が静かで振動も発生しません。単価の安い夜間時の電力をうまく活用して充電すれば、ランニングコストを抑えられるでしょう。

※1:EVの場合でも、使用する電力の発電時には発電形態によってCO₂の排出があります。再生可能エネルギーで発電した電力をEVに利用すれば、CO₂の排出は発電時にも走行時にもなくなります。

  • EVのデメリット

ガソリン車に比べてEVの普及率は低く、充電スポットの数が少ないというデメリットが挙げられます。また、ガソリン車に比べると巡航距離が短く、特に長距離をドライブする際には、なかなか充電スポットが見つからずバッテリー切れとなってしまうリスクもあるでしょう。さらに、ガソリンや軽油の給油に比べて充電に時間を要することも大きな課題です。

エンジンとモーター、2つの動力で駆動する「HV(ハイブリッド自動車)」

エンジンとモーターの両方を使用し駆動するのがHVです。EVのように外部電源からの充電はおこなわず、エンジンからの充電や、走行中の運動エネルギーによってバッテリーを充電します。エンジンに負担のかかる始動時や低速走行時にモーターで補助することにより、低燃費を実現しています。

HVは、発電と駆動の方法により、大きく「シリーズHV方式」、「パラレルHV」、「シリーズ・パラレルHV(スプリットHV)」に分けられます。

【HVの種類】

  • シリーズHV:エンジンは発電機を回すために使用し、その電力でモーターを駆動して走行する

  • パラレルHV :エンジンとモーターの両方で走行するが、主体はエンジンとなる。エンジンが燃料を多く消費する発進や加速時にモーターが動力を補助する

  • シリーズ・パラレルHV(スプリットHV):エンジンのエネルギーを駆動と発電の両方に分けて(スプリット)、エンジンとモーターを使い分けて効率よく走る。発進・低速時はモーターのみで走行し、速度が上がるとエンジンとモーターの双方を使う

これら3種類のHVは、いずれもモーターだけでも走行できるほどに大容量なバッテリーと高出力なモーターを搭載しています。こうしたHVがストロングHV(フルハイブリッドHV)で、これに対し、モーターだけでは走行できない小さな容量のバッテリーやモーターを搭載しているHVを「マイルドHV」と呼びます。

  • HVのメリット

HVはEVとは異なり、外部電源からの充電が不要のためバッテリー切れの心配がありません。長距離ドライブでも充電スポットを探す必要がなく、ガソリン車と同じ感覚で利用できます。さらに、PHVに比べると安価なコストで製造できるため、車両本体価格の安さと低燃費を両立できる点が大きなメリットでしょう。

  • HVのデメリット

HVはエンジンとモーターの両方で駆動するため、電気のみをエネルギーとして走行できず、給油が必須となります。また、PHVのように災害時などに「バッテリー代わり」として使うことができません。

EVとHVの長所をかけ合わせた、PHV(プラグインハイブリッド自動車)

エンジンとモーターの両方を使用するという面ではHVと共通していますが、大きな違いは外部電源からの充電が可能であることです。いわばEVとHVの特長をかけ合わせた自動車がPHVともいえ、実用性が高く環境にも優しい特長があります。

  • PHVのメリット

PHVはHVよりも低燃費で、ランニングコストの節約が期待できます。また、外部電源からの充電が可能であるもののEVのようにバッテリー切れのリスクが少なく、電気のみで走行も可能です。家電製品の電源としても使用でき、災害時などにも役立つでしょう。

  • PHVのデメリット

HVと比較したとき、PHVは車両価格が高額です。また、自宅で充電する際には専用の充電設備を設置しなければならないほか、バッテリーを充電できるスポットも少ないことがデメリットとして挙げられます。

水素と酸素で発電・充電しモーター駆動するFCV(燃料電池自動車)

ガソリン車やHV、PHVのように化石燃料を一切使用せず、その代わりに水素と酸素の化学反応によって生じるエネルギーを電力に換え、バッテリーを充電するのがFCV(燃料電池自動車)です。

  • FCVのメリット

FCVはCO₂を一切排出することがなく、環境に優しいメリットがあります。また、エンジンのなかでガソリンを燃焼することがないため、静寂性も高く振動がほとんどないことも大きなメリットとして挙げられます。

  • FCVのデメリット

FCVを採用している自動車メーカーは限られており、HVやPHVよりも車両価格が高額です。また、水素ステーションが極めて少なく、長距離ドライブでは水素の補給ポイントが見つからないといったリスクも考えられます。

EVのさらなる普及に向けた素材開発の重要性

EVの中でも、すでにHVは一般にも広く普及していますが、PHVやFCV、そして、BEVが同じように普及していくためにはさまざまな課題をクリアしなければなりません。

例えば、BEVやFCVでは巡航距離を伸ばすことが課題です。車体を軽量化できる軽くて強い素材が求められるでしょう。特にBEVでは1回の充電で蓄えられる電気容量の高い電池が求められる中で、電池は大型化し、車の全体重量に占める割合が高くなる傾向にあります。

一方で、車の衝突時や電池の作動時の何らかのトラブルによって起こり得る発火火災などに対する安全性もますます高いものが求められています。三菱ケミカルが開発した「熱可塑性繊維強化複合材 GMT eFR」は、強度と剛性、軽量性に加えて、火災時の安全性を兼ね備えた素材であり、バッテリーパックの外装などへの活用が進められています。

また、バッテリーは寒冷地など温度の低い場所では急速に放電が進んでしまうといった問題があります。季節や場所に関わらずEVを使うためには、低温から高温までの環境下でも安定的に動作するリチウムイオン電池が求められます。三菱ケミカルの有機溶媒系電解液「ソルライト」を用いると、電池性能の大幅な向上が期待できます。

短時間で充電できるようにする電極材料の開発も重要です。三菱ケミカルでは、急速充放電を可能にする天然黒鉛系のリチウムイオン二次電池用負極材のMPG、大容量・長寿命な人造黒鉛系のICGもラインナップしています。

さらに、EVに必要なさまざまな電子部品をプリント技術で搭載できるようにする高分子エポキシフィルムも開発中です。

電気自動車のさらなる普及には、EV・PHV・FCV・HV が抱えるそれぞれの課題を解決するための素材開発の重要性がますます高まっています。特に、電気自動車のさらなる普及のカギを握るリチウムイオン電池では、製造から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクルアセスメント(LCA)における環境負荷の低減が重要です。三菱ケミカルは電池寿命を向上する材料の開発など、さまざまな素材技術で環境負荷を低減し、電気自動車の環境性能をさらに高め、実用化と普及に貢献します。

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